(以下引用)
「今の時代、指導する側が厳しくできなくなって。何年くらいなるかな。僕が初めて高校野球の指導にいったのが2020年の秋、智弁和歌山だね。このとき既に智弁の中谷監督もそんなこと言ってた。なかなか難しい、厳しくするのはと。
でもめちゃくちゃ智弁は厳しいけど。これは酷なことなのよ。高校生たちに自分たちに厳しくして自分たちでうまくなれって、酷なことなんだけど、でも今そうなっちゃっているからね。(中略)
でも自分たちで厳しくするしかないんですよ。ある時代まではね、遊んでいても勝手に監督・コーチが厳しいから全然できないやつがあるところまでは上がってこられた。
やんなきゃしょうがなくなるからね。でも、今は全然できない子は上げてもらえないから。上がってこられなくなっちゃう。それ自分でやらなきゃ。なかなかこれは大変」
と様変わりした現代では、選手がより自身を律することが求められる過酷さを指摘した。
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時代の移り変わりによって、旧来行われていたような「厳しい指導」がされなくなったことについて、イチロー氏が「酷なこと」と、ともすれば世間の直感に反する表現をしていることはきわめて重要だ。
私が知るかぎり、イチロー氏は各地の高校を訪れるたびほぼ毎回この話をしているように思う。相当の思い入れがあって――それこそ警鐘を鳴らすかのように――子どもたちにそのことを伝えたいのだろう。
スポーツをまるで「修行」のような心身修練の機会とするのではなく、あくまでひとつの娯楽やアクティビティとしてエンジョイすることを主眼に置く取り組みは、近年高く評価されている。
甲子園ではまさにそのようなスタイルを貫いた慶應義塾高校が優勝を果たすなど、メンバーをさながら軍隊のごとく厳しくしごきあげる過酷な方法で構成されていた旧来的な指導法は、時代遅れの陋習として否定的に語られる向きが強まっている。
また近年では部活動でのハラスメントや体罰がしばしば問題になることも増えている。そうしたハラスメントや体罰の温床ともなっていた軍隊的な体育会系の指導を受けずに済むことは、時代感覚のアップデートであるようにも思えるし、子どもたちにとっては「いいこと」であるように感じる。
……だが繰り返し強調するが、イチロー氏はこれに諸手を上げて賛同していない。あくまで「子どもたちにとっては酷なこと」と評しているのである。
(中略)
「厳しい大人」がいなくなったいまの世の中では、しかし「やさしい大人」には事欠かない。
それは「直接の監督責任・指導責任を負わなくて済むからこそのやさしさ」であると心得なければならない。いうなれば無責任に由来するやさしさだ。
人間は相手になんら責任を取らなくてもよいときであれば、いくらでもやさしい言葉を並べるし、大した裏付けもなく楽観的観測を述べたりする。それで相手が変な方向にのぼせ上がってしまおうが、現状に満足して停滞してしまおうが、極言すれば「知ったことではない」からだ。
SNSでも「イヤなことから逃げたらいい」「つらいことは拒否すればいい」「めんどくさい他人は切ればいい」といったやさしい言説を発信する人ほど多くの支持や共感を集めているのを目にする。
「しんどいけれど大切なこと」をSNSで言っても支持されないし、むしろ嫌われたり、「お前になにが分かる」と憎まれて石を投げられることさえよくある。そう考えれば、「無責任なやさしさ」を発信する方がよほどコスパはいい。
イチローも警鐘を鳴らした…「大人に叱ってもらえない」Z世代が直面する「やさしさという残酷」 : https://t.co/j5lfANDTLG #現代ビジネス
— 現代ビジネス (@gendai_biz) November 17, 2023
この話題にネットでは
「教育現場で感じた「残酷さ」が見事に言語化されている」
「現代を象徴する言葉。高校生という若い世代と直に接したからこそ出てくるイチローさんの言葉。現代は、厳しさ=リスクでしかない」
「全くその通り。教師が子供の間違っていることを正す指導をしてはいけない学校ってもはや何?」
「他人の叱りなんて本当に本人のこと思ってるのかは疑問ですけどね🤔」
「しゃーないよね。大人も叱るのヘタクソだし。叱ってくれる大人は貴重って言ってるけど、時代を鑑みることなく叱ってくる大人が果たしてまともかどうか...」
「親も叱らない時代だからね。社会でてメンタル壊される子が増えそうよな」
「誰かが「原石を潰すことはなくなったけど、石ころが磨かれて輝くこともなくなった」と言ってたな」
「人に叱ってもらって強制的に自分を律してきた人間は、結局叱ってくれる人がいなくなれば自由に振る舞うよ。そもそも人生てのは厳しくて残酷なんだ」
「今年度、上司から今の若い子はすぐ辞めちゃうから真綿にくるむように育ててって通達あったと聞いた。私は叱るタイプじゃないけど、そんなふうに育てて問題とか課題に直面したときに耐えられるのかな?とは思う・・・」
「Z世代、自分で自分に厳しく出来る超イレギュラーを除いて、ほぼポンコツの中年に仕上がりそう😭」
「今どきの小学生の部活もそう。先生の働き方改革でそもそも活動は週1回。次までに自主練してねと言っても、やらずじまい。できなくて面白くないから、ふてくされる。でも、きつく注意できないから、雰囲気だけ悪くな」
「でも、スポーツを真剣にやってる子は叱られるの当たり前って思ってるよね。モンペ親が増えたんじゃない?」
「今の親は本当怖いよ。指導者に叱られたら、自分の子を叱ったり辞めさせたりせずに指導者を更迭しようとするもん」
「イチローの言う通りだけど、頭ごなしに叱って言うこと聞かせても両方疲れるだけだから、なら言うこと聞ける子に全力注ぐわ」
「非常に難しい問題。自分は体育会系で育ってきてる人間だから、叱られることが当たり前だと思うし、ことさら全部聞き入れないし。要はメンタル」
「叱る方も体力いるよね。出来の悪い子や言うこときかない子に繰り返し叱れる大人ってすごかったんだなあと思う」
「「辛ければ逃げればいい」とかSNSではいつもそういう方向のがバズるのは危うさがあるなと思っているのでこの記事はかなり共感した」
「本当にこれは思う。自分の意に沿わないことを排除していたら成長はない。配慮することは注意しないこととは同義ではない」
という声も。